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ゲーム二次創作ブログ。ポケモソ擬人化など。たまに脚本も。
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樹木が水を吸い上げる音は、動物の鼓動にも似ている。
とくとくとくとく。
どこまでも規則正しく。

「それ」が動物であることは承知しているのだが、体中に苔を纏うものだから、「それ」が植物と動物の間のものであるのではないかと錯覚する。

白い少女は、「それ」の赤い目のすぐ横に、寄り添うようにして体を預けていた。
敵意がないとわかるのか、「それ」はじっと少女を見据えているだけで。

ヤマツカミ。

苔色の古龍はその体を地に休め、ただ呼吸していた。



+++懐古



懐かしい匂いだと、思った。

ヤマツカミが纏うのは深緑の空気であり、太古の風である。
もちろん少女はそれほど長く生きているわけでもなく、遥か古を「懐かしい」と感じることすらないはずだが。

理性の奥底に息づく本能が、「懐かしい」と泣いている。

「それとも、忘れてるだけかしら」

自身の魂がその時を生きていたときのことを。

ぽつりと呟かれた白い少女の言葉に、ヤマツカミは赤い瞳をくるりと光らせることで応じる。
揃いの赤い瞳を伏せて、少女は軽く首を振った。

「何でもないの」

――――風ゥゥゥ……

声に呼応して、苔色の古龍は巨体を膨らませると一気に息を吐く。
ふわりと。
少女の外套と白銀の髪が揺れた。

何を、忘れた?

そう問いかけられたような気がして、白い少女は返答に窮する。

覚えたことも多くあるが、忘れたこともあって。
――――その分、理解をしたことも。

「いっぱい、だよ。いっぱい忘れた」

でもそれはあなたも同じでしょう。

相変わらず、ヤマツカミはゆっくりと呼吸をしている。
千年の時を生きた杉のような、老齢たる落ち着き。

肌に触れる息にふと思い出したのは、いつぞや誰かが言っていた言葉。

「忘れても何かが残る、って」

忘却の中にも、一欠片転がるものがあると。
声に乗せて初めて、その言葉が体に染みていくのが感じられた。

樹木が水を吸い上げる音は、動物の鼓動にも似ている。
とくとくとくとく。
どこまでも規則正しく。

「それ」が動物であることは承知しているのだが、体中に苔を纏うものだから、「それ」が植物と動物の間のものであるのではないかと錯覚する。

白い少女は、「それ」の赤い目のすぐ横に、寄り添うようにして体を預けていた。
敵意がないとわかるのか、「それ」はじっと少女を見据えているだけで。

ヤマツカミ。

苔色の古龍はその体を地に休め、ただ呼吸していた。

「あなたは、」

白い少女は、古龍の赤い瞳を振り仰ぐ。
体を巡る血の色であるその赤は、どこまでもどこまでも穏やかで。

「あなたのなかには、何が残ってる?」

何を覚えていて何を忘れて。
一体何を、その心に残したのか。

――――風ゥゥゥ……

かの呼吸は、神木の息吹にも似ていた。

古塔の空間は時が止まっているかのようで、そのためか否か、ひどく眠い。
ゆるゆると瞼を落とし始めた白い少女の横で、苔色の古龍はすでに瞳を閉じていた。

懐かしい匂いだと、思った。

ヤマツカミが纏うのは深緑の空気であり、太古の風である。
もちろん少女はそれほど長く生きているわけでもなく、遥か古を「懐かしい」と感じることすらないはずだが。

理性の奥底に息づく本能が、「懐かしい」と泣いている。

――――覚えているよ――――

まどろむ意識の中で、温かな声が笑った気がした。
否、それは声でなく呼吸だ。
深い森に差す陽光のような――――……

――――覚えているよ――――

ああ、そうか。
唐突に少女は理解した。

「それ」は古龍であると。

ヤマツカミ。

山つ神。

永き時を生きるは。

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