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ゲーム二次創作ブログ。ポケモソ擬人化など。たまに脚本も。
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吹雪。
轟々たる白銀は明らかな殺意を持って、岩肌をも凍結させる。雪山の日常風景だ。
しかし今日、そのいつもと違っていたのは。
滅多に人の立ち入らない山深く、しかも最近は飛竜がやって来るとかで、一般人立ち入り禁止になっている区画に、二つの人影があったことだ。
一人は、女。燦然たるハニーブロンドの髪が、氷点下の世界で炎のように揺らめいている。
大理石の肌に桜色の頬と唇。瞳は上物の銀の色。
すらりと伸びた手足に、メリハリのついた女らしい体系――――……纏った防具が不似合いなほどの美女であることは間違いない。
軽々とした動作で太刀を肩におき、伸ばした髪を大儀そうに払う。
もう一人は長身痩躯の男だ。片手剣を腰に帯びている。
つややかな、鴉羽色の髪。長く伸びた前髪が顔半分を覆っているため、時折のぞく瞳の青以外に外見的な特徴は捉えにくい。
気だるげではあるものの陰気な雰囲気はなく、むしろどこか好印象を与えるような。
女の唇が、開く。

「これは……どういうことだ?」
「俺にきかれてもな……」

鋭く見据えた視線の先。
散らばった、ギアノスたちの無残な姿。
ぐちり、ごきゅり。肉を噛み千切る音と骨をかみ砕く音。
がつがつとそれらを食らう、異様な外見をもった飛竜。
――――フルフル。
こちらを向いた巨大な口からは、血が赤い糸となって牙を伝っていた。
ふむ、と鼻を鳴らしたのは、女だ。

「お前の股間にぶらさがっているものにそっくりだと思わないか」
「思ってても言っちゃダメだろそれはぁぁ!?初っ端からやめろよなギリギリ発言!PTAから怒られんぞ!」
「訳が分からんことをぬかすな、お前のフルフル引き千切るぞ」
「うぅわ目がマジでいやがる……!」

もはや彼女の暴言には何も突っ込むまい。
溜息をつきながら、彼らが受けた依頼とこの状況との相違について思考を巡らせる。
が、それより速く稲妻をまとう雪山の大食漢が、その巨大な体を振りかぶって。

「あちらさんもやる気だな、このままじゃ食われるか……どうする、ライア」
「決まっている」

軽いステップ。男は左へと跳び退るが、ライアと呼ばれた女はその場に留まる。

――――ァァァァァァアアアアアア――――!!

耳障りな咆哮。
ライア目がけて宙に躍り上がった体が、不気味に白く輝いて。
落ちる。雪が飛び散る。地は抉れてひび入り、そこに彼女の姿は跡形もない――――……
捉えたと確信し油断しきった巨体の後ろで、凛と太刀の切っ先を雪雲へと向けているのだから。

「狩るぞ」

渾身の一閃が、振り下ろされた。



――DeuxLame――



雪山のふもとに存在する小さな村。そこのお抱えハンターが突如飛竜に襲われ片腕を失った。
同じ時、ギアノスの群れが村の近くで暴れまわり始めた。今、村を襲われてしまえばひとたまりもない。
そのため急遽ギアノスたちの退治依頼を出したところ、ある二人組のハンターが引き受けた。
村長である70歳ほどの嫗は満足げに頷いたのだが、どうやら畑仕事で鍛えた腕に覚えのある彼らは、このハンターたちが気に食わないようで。

「こんな奴らに何が出来るっていうんだ!!」

村について早々、男衆のこんな言葉を食らった。
ライアは、隣で悠然と足を組んでいる。
その様子に若干不吉なものを感じながらも、黒髪のハンター――――ハーヴェイは、話題の本人たちの目先で村長に抗議する男衆を眺めた。

「見るからに新人の甘ちゃんじゃないか!」

確かに新人だ。訓練課程を卒業したばかりのほやほやルーキーだ。
甘ちゃんかどうかは別問題にしても。

「あんな頼りなさげな体でギアノス共と戦えるもんか!」

放っておいてほしい。心底思った。好きで痩せているわけじゃない。
今は防具もつけておらず楽な格好をしているため、細身がさらに目立ってしまう。
かといって別に腹がえぐれているわけでもなく、筋肉はそれなりについている。
普段気にしていることでもないのだが、あてつけの方便として使われるのは気持ちのいいものではない。
――――この通り、外見からいっても経験からいっても「強そう」「頼りになる」とは思われがたいのが二人の現状だ。
村の男衆が言うこともわかる。男として、自分より弱い者に守ってもらうのは屈辱的なことだと考える輩は多い。
なのであるからして。

「その物騒なもんはしまっとけ?」
「何の事だ?私は林檎を剥こうとしているんだが」

華奢な片手に、ナイフが怪しく光っている。
尤もらしくもう片方の手に林檎を持ってはいるのだが、ハーヴェイとしてはその凶器がいつ一般人へと飛ぶことになるかと思うと気が気でない。
ライアは黙々と果皮を剥き続ける。刃物を扱いなれた手つきが怖い。
やめるならそろそろやめた方がいいぞ、という彼の小声の忠告もむなしく、さらに男衆は聞こえよがしに続けるのであった。

「女なんか連れやがって、観光気どりかよ」
「…………は?」
「ろくな奴じゃねぇな。もう一人のハンターもきっとこんな感じだろ」

ぺきり。剥かれたばかりの林檎が、彼女の握力によって無残な姿になろうとしていた。
慌ててナイフと林檎を奪い取る。食べ物に罪はない。
おそらく彼らの中で「ハンター=男」の数式でも成り立っていたのであろう。
ライアは「ハンター」としてでなく、単なる「ハンターの連れ」として誤認されていたらしい。
そしてそれは、女ハンターなら一度は感じたことのある屈辱の一つだ。
まずい。
いや彼女の反応は怖くないが、それがいかがなものであれ、事の収拾および後始末はハーヴェイの仕事になってしまう。
彼女と出会ってからの常であるため、そのエピローグは十分に予想できる。そうなると彼としてはとても面倒臭い。

「いや誤解だぞ?こいつは、」
「私がもう一人のハンターだ」

みなまで言うより先に、ゆらりとライアが立ち上がった。
一瞬の静けさ。
次に起こったのは、失笑。「女なんかにハンターが出来るか」と雄弁に物語った、完全に彼女を下に見た反応で。
彼女の唇に、凄絶な笑みが浮かんだ。

「とにかく、どうせならもっとマシなハンターを呼んでくれ」
「こんなのに行かせたら、下手に逆撫でしただけで帰ってきそうだ」

再びやいやい言いだした男衆。
跳ね上がる滑らかな右足。
めこり、と。――――何かがめり込んだ独特の音。

「そんなに私たちに任せるのが嫌なら、自分たちで退治したらどうだ?」

無理やり押し殺したような、声。
一人の男を蹴り飛ばしたのはライアだ。
彼女がまとう絶対零度の鬼気にようやく気付いたのか、冷たく重い沈黙が空気を支配する。
その威圧は、すべてを押しつぶす鉛だ。
心臓を貫く戦槍でもある。
逃れることは叶わない。
生き残ることも――――叶わない?
そう思わせるのは彼女の憤怒。瞳に宿る、業火のごとき激昂だ。
一人が絞り出すように声をあげたのは、たっぷり十秒経ってからだった。

「り、竜と戦うのは、ハンターの仕事だろ……」

がこん。鉄脚一撃。
それ以上物申すことは許されなかった男も、先と同様に床に伸びきった。

「では、凡人の分際で口出しするな」

完璧呑んだな。
艶然と笑う彼女を気だるげに眺めつつ、ハーヴェイは村長が淹れなおしてくれた茶に口をつけた。
今の彼らを例えるなら、「蛇に睨まれた蛙」である。
もう知らねぇ。彼は視線を明後日の方向に向け、妥協にも似た思いで溜息をついた。

「逆に聞くぞ、たかだか一介の農夫のお前たちに何が出来る?何にも出来ない、だろう?でかいトカゲに怯えきって、ハンターを盾に生活を成り立たせている」

――――宝石から精巧に削り出された彫刻が、命という名の熱をもって存在している。
彼女が持つのは、そんなふうに錯覚させる美貌だ。

「そのくせ生意気に、他人の荒と思えばブタのようにたかって騒ぎ立てる」

そして併せ持つ傲慢なまでの自負と気位は、一国の女王にも匹敵する。

「情けないなお前たちは……所詮口ばかりの糞野郎共だ」

どんなに乱暴な言葉も、彼女にしてみればただのアクセサリーだ。

「そんなふ抜けた根性の玉無し共に、なじられる覚えはない」

男たちを、見上げながらに見下す術をライアは知っていた。
それを実行するだけの度量が、自分に備わっているということも。

「――――……っの……!言わせておけば!!」

彼女の頬めがけて放たれた拳。は、軽く首を傾けただけでかわされた。
華奢な足が男の頬を捉え。
次の瞬間に、真下へと蹴り入れられた彼の頭は床へとめり込んでいた。
容赦もくそもへったくれもない。

「とっとと出て行けカスが。出来るなら崖から落ちろ。もしくは素っ裸で雪山の中を駆け回れ、犬のようにな」
「お前それ死ねって言ってんじゃねぇか、ぁあっつ!!」

尤もな呟きの後、ハーヴェイは跳ね上がった。
前置きなしに手の甲へと熱いお茶を注がれたのだ。犯人はもちろん、目の前でふんぞり返る美女である。

「何すんだてめぇ!」
「何故私が殴られそうになったときに茶などすすっているのだ?助けようとは思わないのか」
「助けるも何も、結局一人で片づけてんじゃねぇか……しかもやりすぎだし」
「そうか、目の前で女が殴られていることにどうしようもなく興奮を覚えるのか。変態め」
「話を聞け!人を勝手に変質者にするなっつの!婆ちゃん真に受けるなよー、こいつの冗談タチ悪いんだー」

テンポ良く、半ば漫才じみた会話を繰り広げるハンター二人の様子に、わかっているのかいないのか村長ははいはいと頷いている。
気絶した三人以外、周りにはすでに男衆はいなかった。

「で?どうする、さっさと行ってみるか?ギアノスの群れ撤去作業」
「ん……そうだな」

無愛想にひとつ頷いたライアに頷き返すと、ハーヴェイはのそりと立ち上がった。

――――こんな経緯を経て冒頭に至る。

彼らの仕事はギアノスの群れを退治すること、だった。
しかしそれが、突如出没していたフルフルによって完遂されていたなどとは思いもせず。
依頼書にも「フルフルに気をつけろ」などとは書いていなかったから、これは本当にアクシデントだ。
偶然は誰のせいでもない。よって責める相手も存在しない。
ただ自分たちが食われないために、狩る。

――――斬。

太刀がフルフルの白い皮に、真一文字の傷をつける。

――――ィィィィィァァア――――!!

悲鳴にも似た怒号。
不快そうに眉をひそめたライアは、太い尾の一撃をバック転でかわす。
傷は浅いらしく、かの巨体は元気そうにハーヴェイへと血に飢えた牙を向け直した。が、舌打ちをひとつかましたライアの太刀が、再度フルフルを捉える。
押し出すような斬撃。
二閃、三閃。
その姿は戦乙女にも似た、精悍な美しさを纏う。
雄叫びと共に電撃を放つフルフルからバックステップで遠ざかり、ブロンドの髪をひるがえしてハーヴェイの隣へと舞い降りた。
む、と眉間に皺をよせ、ぽつりと呟く。

「硬い」

だろうな、と相槌を打つ。
上級ハンターにとってみれば、フルフルなぞ恐れるに足りない相手だろう。
だが、いろいろ常識から外れているとはいえ彼女は、そして平々凡々な彼も、まだ駆け出しハンターなのである。
武器も防具もそれなりのもの、決して良い物ではなく。
頼りはライアの身体能力だ。
のそりと体を起こした巨体を見据え、片手剣を引き抜く。

「攻撃の合間ちょいちょい縫って、首と翼膜狙ってくぞ。いけるな?」
「無論だ」

震わすフルフルの咆哮。ぱっくりと開いた口に集中する光。振りかぶる首。
刹那。
放たれる電撃。
左右に跳んだ二つの影。
一方は太刀を背負うにも関わらず驚異的なスピードで。
もう一方は、彼女には劣るものの確実な速さで。――――フルフルへと迫っていく。
優美な肉体が飛竜の懐へと飛び込み、太刀をその首にあて。
引き抜く。肌に刻む赤。
一瞬舞った血はライアの頬を濡らし、雪に反射した光を受けて爛々と輝いた。
同時にフルフルの上に飛び乗ったのは黒髪の男。

「――――……っんの」

一撃、二撃。
十字に斬りつけ、ハーヴェイは再度剣を振りかぶる。
が、雪雲へと猛々しく吠えた巨体に振り落とされ、すぐ近くの白雪の上へと着地した。
ばちり。電撃の光が走る。

「やべ、」
「避けろハーヴェイ!」

女声と同時に、腹にライアの一蹴を食らった。
ぐ、と思わず声が漏れる。二メートルほど飛ばされ、咳き込んだ。
自らも跳ぶようにして避けたのであろう、目の前で受け身をとった彼女を一瞥し、ハーヴェイは怒鳴る。

「助けるならも少し優しく助けねぇか!?」
「贅沢を言うな鈍足が」

お前が速すぎるんだお前が、という言葉を飲み込んだ。
フルフルが、無駄に華麗な体勢で、獲物二人を押しつぶさんと飛び込んできたからだ。
絵に描いたようなダイナミックさとグロテスクさ。いっそ快いほどだ。
……思わず悲鳴をあげるというものである。

「うおおぉぉ!?」

横に転がることで辛くも逃れる。
どすん。
翼が彼の頬をかすった。じんとした痛み。

「ライア、無事か!」
「無事だから退け」

うっかり組み敷いてしまっていたらしいライアの平手一撃を受け、両の頬を押さえつつ退く。
と、先程まで握っていた片手剣がないことに気付いた。
慌てて近くを見回すのだが見当たらず、後でライアにどやされるなと溜め息をついた、その時。

「ハーヴェイ……!」

彼女の細い指が示す方向を見れば、フルフルの腹に痛々しいほどぐっさりと刺さった彼の片手剣。
深々と刺さり抜くことが出来ないそれを振り落とそうと、やっきになって暴れ回っている。
そうか。
ハーヴェイの脳裏に、ある古い書巻の一説が浮かんだ。

全身を竜鱗という鎧で覆い、天空に君臨する飛竜。
しかし、その鎧にもある「穴」がある。
その「穴」を隠すため、古来から竜たちは宝石を巣の中に溜め込み体の下に敷く。

どんな竜にも共通する「弱点」――――腹だ。

(つっても、片手剣じゃ決定打にならないか……)

片手剣といっても刃渡りはあるが、飛竜たち相手ではまだまだ致命傷にはならない。
――――ならば、太刀では?

「っく!!」

頭突きの一撃を食らい、ライアの華奢な体が吹き飛ぶ。
が、空中で体勢を立て直し、猫のような動作で着地した。
その手にはハーヴェイの片手剣が握られている。
巨体の傷口からはどくどくと、赤黒い血が流れ落ちていて。
彼女の唇が、優雅かつ横柄に弧を描いた。
――――いける。

「ライア!」
「ん!」

名を呼べば応える。
それだけで相手の意図がわかる。
次にどう行動するか、さえ。

爆風と共にフルフルが飛び立つ。
ハーヴェイが真下へと転がり込み、見据える。
逆光。
黒い影は、今まさにエリアを変えようと一つ羽打って。
足を踏みしめ掌を上にして、指を互い違いに手を組めば。
軽やかな肢体が、乗った。

「跳べ――――――――!!」

ライアの体を真上へと投げる。
ハーヴェイの手を蹴り、跳び上がる。
互いの息が合えば、いかなる高さへの跳躍も可能にする。
翼のように広がるハニーブロンドの髪。
その姿は軽やかな鳥のように。
鋭い銀の瞳と太刀の切っ先が、飛竜の腹を捉えた。

鈍色の一閃。

――――ァァァァァアアアアアア――――……!!

断末魔の声。

腹を貫き、えぐる刃。

仕上げだといわんばかりに、さらに奥へと太刀を突き立てた。
ぐちり。肉を裂く音。傾くフルフルの体。
落下し始める飛竜の骸から太刀を引き抜いたライアの表情が、歪んだ。

「く……!」

このまま降下を続ければ、確実に巨体の下敷きである。

「ライアッ!」

よく考えればわかるようなことだったが、生憎そんな余裕がなかったのとうっかり頭に血が上っていたので失念していた。
走り出すが、一体何が出来る?
落下速度と二つの体の距離間からいって、ライアが着地してから一秒後、フルフルの体が彼女を押しつぶすだろう。
さすがのライアも、あの高さからの受け身からすぐに動くのは無理だ。

ならば。

「ハーヴェイ、何を――――」
「受け身取れ!!」
「――――……ッ!!」

落ちてくる。
ライア。
フルフル。

狙うのは後者だ。

ライアが体を捻る。
 ハーヴェイが雪上を駆ける。
受け身の姿勢をとる。
 駆け抜けざまに拳を振りかぶる。
着地する。

――――……一瞬の間。

フルフルの巨体めがけ拳を突き出し、――――殴り飛ばした。
五メートルは吹き飛んだ、白き異形の飛竜。
黒髪が舞い上がり、青い双眸が明らかになる。
アーモンド形の、瞳。

「…………いてぇ……ッ!!」
「うむ、あんなものを殴ればそうなるだろうな」

右の拳を押さえ地を這うような声を絞り出すハーヴェイに、ライアは他人事のように頷いた。
髪や鎧についた雪を払い何事もなかったかのように立ち上がるが、次の瞬間眉をひそめ。

「奴の足が額をかすったぞ」
「そこまで構ってられるかよ……!」
「お前ならもっと速く奴を殴り飛ばせただろう」
「飛ばすにゃ確実に入る一点が必要なんだよ!かすったくらいじゃ飛ばねぇんだよ!一般人舐めんな!?」

あくまでも自分を一般人と思い込んでいるらしい彼に向かって、呆れた溜め息をついた。
もしくは、一般人だと信じたいのか。
ハンターとはいえ、防具も付けているとはいえ、自分より何倍もの大きさと硬さを誇るフルフルを殴り飛ばしておいて「痛い」ですむ輩もそうそういない。
まあこんなものに押しつぶされずに済んだのだから別にいいが、とライアは一つ鼻を鳴らした。
片手剣を拾い上げ鞘へと収めると、ハーヴェイは右手を一つ振り、相棒へと向き直る。

「とりあえず適当に剥いだら村に戻るぞ、……その前に手当てしとくか?」

その言葉に彼女は一瞬言葉を失い、視線をそらす。

「……いい、面倒だ」
「破傷風なんかになってみろ、俺が面倒なんだよ」

ライアの左手に走った、真新しい傷。
先ほどフルフルの頭突きを食らった際、牙に引っ掛けられたものだった。

「一旦キャンプに戻ってー、そんで消毒して包帯巻こう。な?」
「…………ん」
「……言っとくけどな、そんだけ血ィ垂れてりゃ誰でも気づくからな?」

何故分かったのだろうか、という疑問さえ見透かされたようだ。
血、といってもフルフルの返り血だって浴びているのだ。おおよそ誤魔化せるほどに。
――――彼はいつもこうだ。
どんな些細な怪我にもいち早く気づく。
ライアがどれほど平静を装っていようとも、だ。

「……うん、そうだな」

ふわりと。
ブロンドの髪を揺らして、彼女は笑んだ。
見ていて、気づいて、気遣ってくれる。
それがどうしようもなく嬉しいと感じていることを、彼は未だに気づいていない。

「お前に任せる」
「まーたそうやって人に面倒臭いこと押し付けやがって」
「何を言う、面倒なことを押し付けられるためにお前は存在しているんだろう」
「何でそんな可哀想なんだよ俺の存在意義!?」
「……手当ては、」

キャンプへと向けて歩き出す。
すれ違いざまに、呟くように言った。

「お前の方が上手いからな」
「……そうだろうよ」

三日続いた吹雪はいつの間にか静まって、厚い雲が裂け始める。
顔を覗かせた蒼穹は奇妙なほどに澄んでいて。
ブヨブヨした皮を三枚抱え、さし始めた光にハーヴェイはくしゃりと笑んだ。

その後。
村に帰れば何故かライアのファンクラブが出来ていたり。
ライアの傷が案外深く、ハーヴェイの絶叫を買ったり。
ハーヴェイの小手にひびが入っており、ライアがそれを大いになじったり。
それからも依頼をこなしたり、壮絶な口喧嘩をしたり。
異例なほどの早さで上級ハンターの仲間入りをしたりしたのだが。
――――それはまたの機会に綴ることとする。

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瑠璃色
性別:
非公開
職業:
パートのおばちゃん
趣味:
演劇、絵描き
自己紹介:
演劇大好きパートのおばちゃん。
ポケモン、モンハン、ゴッドイーターなんかでゲームの二次創作。

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