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ゲーム二次創作ブログ。ポケモソ擬人化など。たまに脚本も。
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誰より花の色に似た君に、自由をあげよう。

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堅く冷たい部屋だと思った。

慣れない正装で首が苦しいが、表面上は必殺貴族スマイル。
白の装束を纏うリベルタに相対するのは、二人の女性。
ウルーズ家当主とその妹。
――――ベネディクトの姉たちだ。
あちらも穏やかな表情を保っているが、想定外の来訪者に戸惑いを隠せないのだろう。
その手が堅く握られている。

「サー・ローエンハイム。ようこそおいで下さいました」
「こちらこそ、突然お伺いしたにも関わらずご丁寧にしていただいて」

柔らかな声と、明朗な声。
底の知れない腹を探り合う。

「紅茶でもいかが? 最近異国から取り寄せたもので、香りがとても華やかなんですよ」

その声とともに、目の前にカップが置かれた。
かちゃり。
上品な色に染まった液体が、光を受けて輝きながら揺らいでいる。
美しく彩られた陶器がそれをより引き立てていた、が。

「はは、遠慮します。まだ死にたくないのでね」

苦笑交じりを装って。
案の定、彼女が一瞬眉を吊り上げたのを見逃さなかった。

……やはり毒か。

「いや、こちらに伺う前に馴染みの茶葉売りのところに寄りましてね。たくさん仕入れたからとしこたま飲まされまして。これ以上飲んだら、女性の前で死ぬよりひどい醜態を晒してしまう」
「……そうですか。残念です」
「終いには従者にも飲ませる始末でしてね、これからウルーズ家のご当主に挨拶に行くからと申したんですが」

従者、という言葉に、姉たちの視線がちらりと動く。

「ああ、彼はさすがに気分を悪そうにしていたので、外の馬車で休ませているところです」
「まあ……それはそれは」
「なら別室をご用意いたしますよ? 休ませなさったら?」
「何、彼も公爵家の一員です。それほどやわではありませんよ」

これまでの会話の要約。
俺をここで殺そうもんならすぐにばれるぜババア共。

もし一時間もして帰らないようならすぐに父に知らせるようにと、「彼」には言いつけている。

「……ところで、サー・ローエンハイム。ご用件を承りましょうか」

きた。
自然と口の端が吊り上がった。
心臓が狂ったように踊っているが、決して悟らせまい。
一世一代の勝負。

「既に書簡にて申し上げたと思いますが。……ウルーズ家三女ベネディクト殿を、是非我が公爵家の侍女として迎えたいのです」

ぴしり。
ガラスがひび入る音がしたような、そんな錯覚を起こしそうになるほどに凍る時。
構わない。続ける。

「同じ近衛騎士団として彼女の活躍を見守らせていただいていました。実に優秀な妹さんですね」
「そうですね、誇りに思っておりますわ」
「鍛錬も怠らないし、書類仕事も早い。彼女のような方にこの若輩を支えていただきたいと常々思っていると話したところ、父が非常に興味をもちましてね……」

リベルタの父。つまり、ローエンハイム公爵家当主である。
その身は遠からずも王族に通じ、貴族の中でもかなり高い位置にある。
この話は本当だ。ベネディクトの身の上、そして自分が為したいことを全て打ち明けたところ、快く名を貸してくれることを受け入れてくれた。
家に帰着する頃には彼女のための部屋が用意されていることだろう。

「……身に余るお話ですわ。ですが、」
「“ですが、”……何でしょう?」

黙れ。
話を促すふりをして、封じる。

「何やら不満そうな顔をなさいますね」

そう言って笑うリベルタの瞳は、赤く、ほの暗い。
まるで獲物を前にした猛禽のような。

「もちろん多額の感謝金は詰みましょう」

第一のメリット。

「生活費も公爵家がもちます。三姉妹の末ともなりますと、正直手に余りますでしょう?」

第二のメリット。

「それに……書類上、彼女は私の持ち物になる。そうなれば事実上降格、決して貴女方の上は目指せません」

第三のメリット。
カードは、揃えた。

「ローエンハイム公爵の名に誓って、彼女の“安全”も保証しましょう。……それだけでは足りないとお申しになりますか?」

沈黙の上に、重ねる。
荘厳にして静かな、声音。

「貴女方も賢い方だ。ローエンハイム公爵家がどういった血筋かよくおわかりのはず。ここで仲たがいを起こすのも、お互いの損になるだけでしょう?」

腰に刺した業物「ムラサメ」がちりんと音を立て、その存在が顕著になる。
書類を姉たちの方に差し出しながら、印を押す場所を指し示した。

「さあ、決めて下さい。……もっともここで頭を縦に振らなければ、貴女方が何を企んでいるのか……民衆はとても気になるのでしょうけどね?」

自由の名を冠した騎士が浮かべたのは、無邪気な悪意を込めた笑顔であった。



ウルーズ家の屋敷の前に、白で統一された馬車が停まっていた。
その中からちらちらと、落ち着かなさげに薄紅の髪が覗く。
「彼」、――――否、実際には「彼女」と言った方が正しい。
懐中時計の針が示す時間を気にしながら、ベネディクトはまたウルーズ家の屋敷を見上げる。

(もうすぐ、一時間)

真っ白な正装に身を包んだ騎士が告げた、タイムアップ。

話し合いはどうなったのだろう。上手くいったのだろうか、それとも。
――――これは危険な賭けだった。
ウルーズ家の屋敷、つまり姉たちの城。
逆上した彼女たちなら何をするかも分からない。

大丈夫だと笑った、幼くも頼もしい自由卿。

「っ、あ」

思わず、息を漏らした。
門をくぐり颯爽と、歩み寄ってくる白の騎士。

視線が合う。
リベルタが笑う。
屋敷の窓から見えないようにと、小さく主張されたVサイン。

「――――……!!」

声にならない声と、涙が、こぼれた。



end.

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